この記事では、
介護人材を確保するためには、介護職員等特定処遇改善加算の「賃金改善の対象となるグループ」をどう選択すればいいか?
についてまとめています。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 介護職員さんの採用に苦労している
- 賃金改善の対象グループをどうするか悩んでいる
- 「介護職員等特定処遇改善加算」の制度を知りたい
賃金改善の対象職種は「経験・技能のある介護職員」に限定しよう
「介護職員等特定処遇改善加算」を算定する事業所は、
- 経験・技能のある介護職員のみに処遇改善を実施
- すべての介護職員に処遇改善を実施
- 看護師などを含む、すべての職種に処遇改善を実施
の3つから、処遇改善を行う職種を選ぶことができますが、賃金改善の対象職種を広げれば、広げるほど、「経験・技能のある介護職員」の給与が減ってしまいます。
そうなると、そもそもの特定処遇改善加算の趣旨(目的)から離れていってしまいますので、僕としては、
「経験・技能のある介護職員に限定して賃金改善を行うべき」
だと思います。
それでは、その理由について紹介していきます。
原則は、勤続年数10年以上の介護福祉士に月額平均8万円相当の処遇改善を行う制度
そもそも、介護職員等特定処遇改善加算は、
「介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について、月額平均8万円相当の処遇改善を行う」
という所から議論が始まった制度です。
なので、介護職員(介護福祉士)さんからすれば、
「長く働けば、給与が、8万円(月額)上がるんだ~」
というイメージが植えつけられています。(うちの職員がそうです・・・)
それを、「経験・技能のある介護職員」以外の職種へ賃金改善を行うことで、給与が思ったより増えないってことになると、かなりの残念感が漂います。
場合によっては、「賃金改善を行ってくれる、他の事業所へ転職」なんてことも・・・
事業所としては、経験豊富な介護福祉士さんの退職は、サービスの質の低下を意味します。(経験年数が多いから、良い介護ができるというわけではありませんが・・・)
なので、介護福祉士さんの「月8万円」というイメージを壊し、モチベーションを下げてしまうようなことは極力避けるべきです。
「経験・技能のある介護職員」の給与が減る!賃金改善職種の設定ルール
介護職員等特定処遇改善加算は、現行の処遇改善加算を除いた介護給付費の合計に対し、加算率を掛け、給付額(賃金改善額)が決まります。
そして、その給付額(賃金改善額)をもとに、処遇改善を行う職員(職種)に分配することになります。
つまり、「介護職員等特定処遇改善加算」とは、
「賃金改善を行う職員数が増えれば増えるほど、原則、1人あたりの賃金改善額が少なくなる」
という制度なんです。
また、分配方法には、次のようなルールが設定されています。
- 「経験・技能のある介護職員」のうち1人以上は、賃金改善に要する費用の見込額
が月額平均8万円以上または賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以上であること - 「経験・技能のある介護職員」の賃金改善に要する費用の見込額の平均が「他の介護職員」の賃金改善に要する費用の見込額の平均の2倍以上であること
- 「他の介護職員」の賃金改善に要する費用の見込額の平均が「その他の職種」の賃金改善に要する費用の見込額の平均の2倍以上であること
ただし、「その他の職種」の平均賃金額が他の介護職員の平均賃金額を上回らない場合はこの限りでないこと - 「その他の職種」の賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円を上回らないこと
なお、賃金改善前の賃金がすでに年額440万円を上回る場合には、その職員は特定加算による賃金改善の対象とはならない
図にすると、こんなイメージです。
出典:厚生労働省「2019年度介護報酬改定について」
ちなみに、概算ではありますが、100床規模の老健の場合、介護職員等特定処遇改善加算の金額は、「月額50~70万円程度かな~」って感じです。
この金額を、「何人の職員さんで分配するか?」によって、一人ひとりの賃金改善額が変わってきますので、もし、1人8万円を基本とした場合、賃金改善できる人数はかなり限定されちゃいます。
そういう意味でも、長く介護業界に貢献してくれている人に、大きめの金額を分配してあげたいと思うわけです。
「介護福祉士」の有資格者に介護業界で働いてもらいたい
「介護福祉士の学校を卒業しても、介護の仕事はしない」
「介護福祉士を持っているけど、介護の仕事はしていない」
最近は、こういう人が多いと聞きます。
僕としては、
「せっかく勉強して国家資格を取ったのに、もったいないな~」
と思いつつ、
「賃金などの問題もあって、本当は、介護の仕事がしたいんだけどできない・・・」
という人も多いのかな?とも思います。
政府は、こういった「介護の仕事がしたくてもできない」人たちに、介護業界で安心して働いてもらうために、介護職員等特定処遇改善加算を創設したのだと思います。
介護福祉士を取得し、経験を積むことで「月額8万円の給与アップ」があるというのは働く側からすれば、大きな希望になりますし。
そういう意味でも、「経験・技能のある介護職員」に限定して賃金改善を行うことは、介護福祉士の有資格者さんに、
「また、介護の仕事をやってみようかな~」
と思ってもらうための大きな要素となります。
既存の「介護職員処遇改善加算(最大で月額37,000円)」とあわせると、かなり大きな賃金改善額になりますし。
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まとめ
ここで、「介護職員等特定処遇改善加算における、賃金改善の対象となるグループの選択方法とその理由」についておさらいです。
- 経験・技能のある介護職員に限定して賃金改善しよう
- 介護福祉士さんの「月額平均8万円相当の処遇改善」の夢を大切に
- 長く介護業界に貢献してくれている人に、大きめの金額を分配してあげたい
- 「また、介護の仕事をやってみようかな~」と介護福祉士さんに思ってもらう
- 既存の処遇改善をあわせると、月額117,000円以上の賃金改善になる
介護職の人材不足は、かなり深刻で、有効求人倍率は、4.16(2018.9月)となっています。
また、厚生労働省が発表した「第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」によると、
- 2020年で、約13万人
- 2025年で、約34万人
の介護人材が不足すると予想されているため、今まで以上に、人材不足が深刻化します。
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この介護人材不足に対応するためにも、介護福祉士という資格の価値(給与)を引き上げ、介護業界で安心して働き続けられる環境づくりが大切です。
そうした環境づくりのため、ぜひ、介護職員さんの資格(介護福祉士)と経験をしっかり評価してあげられるよう、運用ルールを検討してみてください。
ちなみに、介護職員等特定処遇改善加算は、「経験・技能のある介護職員」の基準(定義)も、事業所側の判断に委ねられています。
もし、「経験・技能のある介護職員」の基準設定でも悩んでいるなら、こちらの記事をご覧ください。
僕の考えをまとめていますので。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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