社会保険料を計算するときに使用する「標準報酬月額」の決定(改定)は、健康保険法で、次の4つの方法(タイミング)で行うと定められています。
【標準報酬月額の決め方】
- 資格取得時の決定
- 定時決定
- 随時改定
- 育児休業等終了時の改定
この記事では、これらの標準報酬月額の決定(改定)方法の中から、「定時決定」についてまとめています。
「社会保険料の仕組みを知りたい」
「必要以上に社会保険料を払いたくない」
という人に、読んでいただけると嬉しいです。
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随時改定と育児休業等終了時の改定については、こちらの記事でまとめています。
標準報酬月額の「定時決定」とは
標準報酬月額は、原則、1年に1回しか改定されません。
よって、標準報酬月額をもとに計算される社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)も、1年間変更されません。
定時決定とは、この1年に1回行われる「標準報酬月額」の見直しのことをいい、実際の給与(報酬)と標準報酬月額に大きな差が生じないようにしています。
なお、標準報酬月額の説明と決め方については、こちらの記事を。
定時決定は、毎年、7月1日現在の被保険者(職員)に対し行われる
定時決定の対象者は、一定の条件を満たした、毎年、7月1日現在の被保険者(職員)です。
ただし、次のいずれかに該当する人を除きます。
- 6月1日から7月1日までに被保険者の資格を取得した人
- 7月から9月までの期間に、「随時改定」または「育児休業等終了時の改定」が行われる人
定時決定における、標準報酬月額の決定方法
定時決定は、毎年、4~6月の3ヶ月間に支払われた給与(報酬)の月平均額を「報酬月額」とし、「標準報酬月額」を決定します。
決定(改定)された標準報酬月額は、9月分から来年8月分の1年間に適用されます。
なお、こんな感じのサイクルです。
(9月分の社会保険料を10月の給与で控除することとし作成しています)
【定時決定のサイクル】
定時決定で、報酬月額を計算するときのルール(条件)
定時決定で、報酬月額を計算するとき、
- 常勤(正社員)
- 短時間就労者(パート・アルバイトなど)
- 特定適用事業所に勤務する短時間労働者
で「支払基礎日数」の取扱いが変わってきます。
なお、支払基礎日数とは、常勤(正社員)と非常勤(パート、アルバイト)で取扱いが分かれていて、
- 常勤者(月給制)の場合は、休日を含めた1ヶ月の総日数
- 非常勤(時給制)の場合は、1ヶ月の出勤日数
となります。(有給休暇の日数は、支払基礎日数に含めます)
常勤(正社員)における、支払基礎日数の取扱い
常勤職員の定時決定は、次のようなルールで行います。
- 「報酬月額」を計算するときは、支払基礎日数が17日以上ある月に限る
- 支払基礎日数が17日未満の月は、除いて「報酬月額」を計算する
- 4~6月の3ヶ月とも支払基礎日数が17日未満の場合は、今までの標準報酬月額を引き続き適用する
わかりやすく、一覧表にしておきます。
【常勤職員の支払基礎日数の取扱い】
支払基礎日数 | 標準報酬月額の決定方法 |
3ヶ月とも17日以上ある場合 | 3ヶ月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
1ヶ月でも17日以上ある場合 | 17日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
3ヶ月とも17日未満の場合 | 今までの標準報酬月額で決定 |
短時間就労者における、支払基礎日数の取扱い
短時間就労者の定時決定は、次のようなルールで行います。
- 4~6月の3ヶ月のうち支払基礎日数が17日以上の月が1ヶ月以上ある場合は、該当月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定する
- 4~6月の3ヶ月のうち支払基礎日数がいずれも17日未満の場合は、3ヶ月のうち支払基礎日数が15日以上17日未満の月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定する
- 4~6月の3ヶ月間とも支払基礎日数が15日未満の場合は、今までの標準報酬月額を引き続き適用する
これも、わかりやすく、一覧表にしておきます。
【短時間就労者の支払基礎日数の取扱い】
支払基礎日数 | 標準報酬月額の決定方法 |
3ヶ月とも17日以上ある場合 | 3ヶ月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
1ヶ月でも17日以上ある場合 | 17日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
3ヶ月とも15日以上17日未満の場合 | 3ヶ月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
1ヶ月または2ヶ月は15日以上17日未満の場合(1ヶ月でも17日以上ある場合は除く) | 15日以上17日未満の月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
3ヶ月とも15日未満の場合 | 今までの標準報酬月額で決定 |
なお、短時間就労者とは、1日または1週間の労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、常勤職員(正社員)の4分の3以上である労働者のことです。
特定適用事業所に勤務する短時間労働者における、支払基礎日数の取扱い
特定適用事業所に勤務する短時間労働者の定時決定は、次のようなルールで行います。
- 「報酬月額」を計算するときは、支払基礎日数が11日以上ある月に限る
- 支払基礎日数が11日未満の月は、除いて「報酬月額」を計算する
- 4~6月の3ヶ月とも支払基礎日数が11日未満の場合は、今までの標準報酬月額を引き続き適用する
わかりやすく、一覧表にしておきます。
【短時間労働者の支払基礎日数の取扱い】
支払基礎日数 | 標準報酬月額の決定方法 |
3ヶ月とも11日以上ある場合 | 3ヶ月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
1ヶ月でも11日以上ある場合 | 11日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
3ヶ月とも11日未満の場合 | 今までの標準報酬月額で決定 |
なお、特定適用事業所については、こちらの記事を。
3~5月の残業が多いと、1年間の社会保険料が高くなる!?
標準報酬月額は、毎年4~6月に実際に支払われた給与から計算され、原則、1年間変更されません。(随時改定の条件を満たした場合を除きます)
ですので、3月・4月・5月の給与が多いと、その後1年間の社会保険料が高くなります。
たとえ、6月以降の給与が少なかったとしても・・・
社会保険料は、所得税のように、年末調整などの手続きで戻ってくるお金ではありません。
年度末が忙しい仕事の人もいるかと思いますが、毎年3~5月は極力残業を少なくしたほうが、社会保険料を安くすることができます。
ちなみに、こういう働き方が、一番損をします。
- 3月から5月は、残業や夜勤が多い
- 4月から翌年2月は、残業や夜勤がない(少ない)
ぜひ、必要以上の社会保険料を払わないよう、働き方を検討してみてください。
⇒「定時決定のため、4月~6月の報酬月額の届出を行う際、年間報酬の平均で算定するとき」
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まとめ
ここで、「標準報酬月額の定時決定」についておさらいです。
- 定時決定とは、1年に1回行われる「標準報酬月額」の見直しのこと
- 定時決定の対象者は、毎年、7月1日現在の被保険者(職員)
- 定時決定では、毎年、4~6月の3ヶ月間に支払われた給与(報酬)から「標準報酬月額」を決める
- 定時決定された標準報酬月額は、9月分から来年8月分の1年間に適用
- 3~5月の残業が多いと、1年間の社会保険料が高くなる
健康保険、介護保険、厚生年金保険の保険料をあわせると、約15%(被保険者負担分)になります。
標準報酬月額は、「6,000円~60,000円」の幅で区切られていますので、少し上がるだけでも、年間保険料は結構な増額になっちゃいます。
なので、社会保険料を少しでも安く抑えたいなら、毎年3月から5月は、できる限り残業しないことをオススメします。
まー、組織文化の関係もあるので、なかなか難しいですけどね・・・(笑)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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