この記事では、育児休業期間中に支給される「育児休業給付金」の
- 支給条件
- 支給額(早見表)
- 支給内容
- 申請手続き
について紹介しています。
会社員などの社会保険(雇用保険)に加入してる人は、子育てのため仕事を休んだとき、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。
ただ、育児休業を取得すれば、必ず「育児休業給付金」がもらえるというわけではありませんので、
- 出産を予定している
- 「子どもが欲しいな~」と考えている
という人は、支給条件について、ぜひ、チェックしてみてください。
育児休業給付金の支給条件は、「育児休業の取得」と「1年以上の雇用保険への加入」
育児休業給付金の支給条件は、次の2つをいずれも満たすことです。
- 子どもを養育するための「育児休業」を取得していること
- 雇用保険の被保険者で、育児休業開始前2年間に、賃金支払の基礎となる日数が11日以上、または、賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある完全月が12ヵ月以上あること
それでは、詳しく説明していきます。
子どもを養育するための「育児休業」を取得していること
育児休業とは、次のような休業をいいます。
第2章 育児休業
(育児休業の申出)
第5条
労働者は、その養育する1歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。
ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、次の各号のいずれにも該当するものに限り、当該申出をすることができる。
一 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者
二 その養育する子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者
出典:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
わかりやすく言うと、
「1歳未満(場合によっては2歳まで延長)の子どもを養育するため、事業主に申出した休業」
って感じです。
なお、労使協定を締結している事業所の場合は、この限りではありません。
詳しくは、こちらの記事を。
雇用保険の被保険者で、育児休業開始前2年間に、賃金支払の基礎となる日数が11日以上、または、賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある完全月が12ヵ月以上あること
育児休業給付の支給を受けるには、
「雇用保険の被保険者で、育児休業開始前2年間に、賃金支払の基礎となる日数が11日以上、または、賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある完全月が12ヵ月以上あること」
が必要です。
わかりやすく言うと、育児休業を利用する前の2年間(直近)に、
- 11日以上働いた月
- 80時間以上働いた月
の合計が、12ヶ月以上ある人ってことです。
また、この12ヶ月以上の考え方ですが、「1月、2月、3月・・・」と歴月で数えるのではなく、育児休業開始日の前日から1ヶ月ごとに区切って遡っていきます。
たとえば、育児休業開始日の前日が「11月15日」の場合、
- 10/16~11/15
- 9/16~10/15
- 8/16~9/15
- 7/16~8/15
って感じで、12ヶ月を数えていきます。
雇用保険の加入期間が長い人は、全く気にする必要はありませんが、加入期間が短い人(1年~1年3ヶ月程度)の場合、注意が必要です。
【関連記事】
なお、「賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上」の受給要件については、令和2年8月1日より追加になった考え方です。
詳しくは、こちらの記事を。
育児休業給付金の計算方法
支給額は、
「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 支給率(67% or 50%)」
で計算します。
なお、この計算で使われている
- 休業開始時賃金日額
- 支給日数
- 支給率(67% or 50%)
は、次のように算出します。
休業開始時賃金日額
「休業開始時賃金日額」は、育児休業開始前6ヶ月間の賃金合計額を180で割って算出します。
たとえば、月額給与25万円の人の場合、
25万円 × 6ヵ月 ÷ 180 = 8,333円(小数点以下切り捨て)
となり、休業開始時賃金日額は、「8,333円」となります。
【関連記事】
支給日数
支給日数は、育児休業期間(支給単位期間)1ヶ月を30日とし、計算します。
ただし、育児休業終了日を含む育児休業期間(支給単位期間)については、その育児休業終了日までの日数となります。
たとえば、出産日を2020年4月1日とし、育児休業期間が「2020年5月28日~2021年3月31日」の場合、
- 5/28~6/27 支給日数30日
- 6/28~7/27 支給日数30日
- 7/28~8/27 支給日数30日
- 8/28~9/27 支給日数30日
と計算していき、育児休業終了日を含む最後の支給単位期間「3/28~3/31」については、3日が支給日数となります。
ちなみに、最後の支給単位期間「3/28~3/31」の支給日数が、4日ではなく、3日なのは、育児休業給付金の支給期間は、原則、子どもの1歳の誕生日の前々日までとなっているからです。
このとおり。
Q10 育児休業給付は、いつまで支給されるのですか。
原則、養育している子が1歳となった日の前日(具体的には1歳の誕生日の前々日。民法の規定上、誕生日の前日をもって満年齢に達したとみなされる為)までです。
ただし、子が1歳になる前に職場復帰された場合は復帰日の前日までです。
また、一定の要件を満たした場合は、最大で1歳6か月又は2歳となった日の前日まで受給できる場合があります。
支給率
「支給率」については、育児休業を取得した日数で分けられており、
- 育児休業開始日から180日までは、67%
- 181日から職場復帰前日までが、50%
となります。
育児休業給付金の支給額(育児休業給付金早見表)
ちょっと、計算が面倒なんで、早見表(概算)にしておきます。
使い方は、次のとおりです。
2. 「1日あたりの支給額」と「育児休業の取得期間に応じた日数」を掛ける
3. 計算結果が、「育児休業給付金の支給額」となります。
なお、エクセルを使える人限定になっちゃいますが、「もっと、詳細な計算がしたいぜ~」という人は、
- 産前・産後休業期間
- 育児休業期間
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 育児休業給付金
を自動計算する「エクセルファイル(無料)」を、こちらの記事で紹介しています。
もしよければ、チェックしてみてください。
育児休業給付金の支給内容
育児休業給付金は、育児休業開始日を起算日とし、1ヶ月ごとの期間(支給単位期間)について支給されます。
たとえば、育児休業開始日が「11月15日」の場合、支給単位期間は、
- 11/15~12/14
- 12/15~1/14
- 1/15~2/14
- 2/15~3/14
って感じです。
なお、支給単位期間は1ヶ月ごとですが、支給申請は、原則2ヶ月ごとに行われますので、2ヶ月分の育児休業給付金がまとめて支給されることになります。
育児休業期間中に退職した場合
育児休業給付金は、職場復帰を前提とした制度のため、育児休業期間中に退職した場合、その支給単位期間以降の支給は受けられません。
ちなみに、それまでに受給した給付金を返金する必要はありません。
このとおり。
Q16 育児休業期間中に、退職した場合は、それまで受給した育児休業給付は返金する必要がありますか。
育児休業開始時点で退職が予定されている場合を除き、育児休業期間中に退職した場合は、その支給単位期間以降、支給対象となりませんが、それまで受給した育児休業給付を返金する必要はありません。
育児休業給付金の申請手続き
育児休業給付金の申請書類
育児休業給付金の申請手続きは、「育児休業給付金支給申請書」にて行います。
こんな様式です。
出典:厚生労働省(ハローワーク)
この申請書は、ハローワークから事業主へ届き、2ヶ月ごとに申請者(育児休業者)の署名・捺印のうえ提出します。
育児休業給付金の申請手続きは、事業主を通じて行う
育児休業給付金の申請手続きは、事業主を通じて行われます。
ですので、「育児休業給付金支給申請書」への申請者(育児休業者)の署名・捺印後、事業主が添付書類と一緒に、ハローワークへ提出することになります。
まとめ
ここで、「育児休業給付金の支給申請をするときのポイント」について、まとめておきます。
- 育児休業給付金の支給条件は、「育児休業の取得」と「1年以上の雇用保険への加入」
- 支給額は「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 支給率(67% or 50%)」で計算される
- 育児休業期間中に退職すると、その支給単位期間以降の支給は受けられない
- 育児休業給付金の支給申請は、原則、2ヶ月ごとに行う
- 育児休業給付金の申請手続きは、事業主を通じて行う
育児休業給付金は、受給条件を満たせば、非常勤(パート・アルバイト)でも支給を受けることができます。
雇用保険は「週20時間の勤務」で加入できますので、配偶者等の扶養の範囲で働いている人でも対象になる場合があります。
ぜひ、育児休業給付金の支給条件をチェックし、積極的に制度を利用してみてください。
なお、育児休業給付金以外の「出産・育児に係る制度」については、こちらの記事でまとめています。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【あわせて読みたい】
コメント