育児休業給付金の受給要件に、
「育児休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヵ月以上あること」
という項目があるんですが・・・
この要件、すっごくわかりづらくないですか?
というのも、
以前、この「受給要件」の取扱いで、職員さんに迷惑をかけたことがありまして・・・(僕の理解不足が原因でした)
つまり、「僕の大失敗」ってことです。
そこで、この記事では、自らの失敗した経験をもとに「賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月」の考え方について、まとめておきます。
ぜひ、
- 出産を予定している
- 「子どもが欲しいな~」と考えている
- 仕事で社会保険手続きを担当している
という人に、読んでいただきたいです。
僕みたいな失敗をしないように。
「賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月」とは2つの条件を満たさなければならない
この受給要件ですが、
「1ヶ月の出勤日数が11日以上あればいいんでしょ!?」
と思いがち(僕がそう思ってました・・・)ですが、ぜんぜん違うんです!!
「賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月」とは、
- 1ヵ月の賃金支払基礎日数が11日以上あること
- 完全月であること
という、2つの条件をいずれも満たす必要があるのです。
それでは、1つずつ詳しく説明していきます。
1ヵ月の賃金支払基礎日数が11日以上あること
育児休業給付金の受給要件でいう1ヶ月とは、「1月、2月、3月・・・」と歴月で数えるのではなく、育児休業開始日の前日から1ヶ月ごとにさかのぼり、区切った期間のことです。
こんな感じです。
【育児休業開始日の前日が「11月15日」の場合】
- 10/16~11/15(1ヶ月)
- 9/16~10/15(1ヶ月)
- 8/16~9/15(1ヶ月)
- 7/16~8/15(1ヶ月)
そして、「賃金支払基礎日数」とは、常勤者と非常勤(パート、アルバイト)で取扱いが分かれており、
- 常勤者(月給制)の場合は、休日を含めた1ヶ月の総日数
- 非常勤(時給制)の場合は、1ヶ月の出勤日数
が賃金支払基礎日数となります。
なお、有給休暇の日数は、賃金支払基礎日数に含めます。
完全月であること
この「完全月」という言葉が、くせものなんです。
完全月とは、1ヶ月間、丸々あることをいいます。
ですので、育児休業開始日の前日から1ヶ月ごとに区切った場合、
「8/16~9/15」の期間は、完全月となり、
「9/1~9/15」の期間は、完全月とはなりません。
育児休業給付金における僕の大失敗
ここで、僕の大失敗事例を紹介します。
以前、うちの職場に、こんな看護師さんがいたんです。(わかりやすくするため、出産予定日等を変更しています)
- 入職日 2017年6月1日
- 出産予定日 2018年7月2日
- 産休開始 2018年5月22日
- 育児休業開始 2018年8月28日
- 非常勤で週4勤務
僕が勘違いしていた「育児休業給付金の受給要件」
僕は、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が、暦月で12ヶ月あればいいと思っていました。
こんな感じで。
月数 | 年月 | 賃金支払基礎日数11日以上 |
1 | 2017年6月 | ○ |
2 | 2017年7月 | ○ |
3 | 2017年8月 | ○ |
4 | 2017年9月 | ○ |
5 | 2017年10月 | ○ |
6 | 2017年11月 | ○ |
7 | 2017年12月 | ○ |
8 | 2018年1月 | ○ |
9 | 2018年2月 | ○ |
10 | 2018年3月 | ○ |
11 | 2018年4月 | ○ |
12 | 2018年5月 | ○(5/22~産休) |
13 | 2018年6月 | × |
14 | 2018年7月 | × |
15 | 2018年8月 | × |
賃金支払基礎日数11日以上ある月が12ヵ月ありますよね。
正しい「育児休業給付金の受給要件」
育児休業開始日の前日から1ヶ月ごとにさかのぼって、受給要件を確認してみると。
月数 | 受給要件における 「1ヶ月の期間」 |
賃金支払基礎日数 11日以上 |
完全月 | 2つの条件 を満たす月 |
1 | 2017年6月1日~6月27日 | ○ | × | × |
2 | 6月28日~7月27日 | ○ | ○ | ○ |
3 | 7月28日~8月27日 | ○ | ○ | ○ |
4 | 8月28日~9月27日 | ○ | ○ | ○ |
5 | 9月28日~10月27日 | ○ | ○ | ○ |
6 | 10月28日~11月27日 | ○ | ○ | ○ |
7 | 11月28日~12月27日 | ○ | ○ | ○ |
8 | 12月28日~1月27日 | ○ | ○ | ○ |
9 | 2018年1月28日~2月27日 | ○ | ○ | ○ |
10 | 2月28日~3月27日 | ○ | ○ | ○ |
11 | 3月28日~4月27日 | ○ | ○ | ○ |
12 | 4月28日~5月27日 | ○(5/22~産休) | ○ | ○ |
13 | 5月28日~6月27日 | × | ○ | × |
14 | 6月28日~7月27日 | × | ○ | × |
15 | 7月28日~8月27日 | × | ○ | × |
8月28日~育児休業開始 |
あれ・・・
賃金支払基礎日数11日以上ある完全月が11ヵ月しかない・・・
こんな感じで、職員さんに期待を持たせちゃったんです。(反省です)
なお、この状況で「育児休業給付金」をもらうには、産前休業期間(42日間)に働くか、有給休暇をガッツリ使うしかないと思います。
ただ、妊娠中の体調不良などで有給休暇を使用していたこともあり、ほぼ残っていませんでした。
なので、制度を正しく理解していたとしても、結果は変わらなかったかもしれません。(いいわけです・・・)
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育児休業給付金の受給要件は、前職の雇用保険加入期間を含んで良い
「育児休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヵ月以上あること」には、前職の雇用保険加入期間も算入できます。
なので、現在の職場で雇用保険加入期間が12ヵ月に満たない場合は、育児休業開始前2年間の期間で、雇用保険に加入していた期間を確認しましょう。
転職したばかりでも、育児休業給付金の支給を受けられるかもしれませんよ。
ちなみに、「僕の大失敗事例」に登場した看護師さんは、前職の雇用保険加入期間は算入できませんでした・・・
傷病手当金を受給している期間は、賃金支払基礎日数に含めない
妊娠中の体調不良(つわりなど)で「傷病手当金」をもらっていた期間は、一般的に給与支払いがないため、賃金支払基礎日数にカウントできません。
場合によっては、受給資格を満たせなくなる可能性がありますので、注意が必要です。
なお、育児休業開始前2年間に、病気やケガで30日以上賃金の支払いを受けることができなかった場合は、その期間を育児休業開始前2年間にプラス(延長)することができます。
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まとめ
ここで、「賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月」の取扱い(考え方)について、おさらいしておきます。
- 育児休業給付金の受給要件でいう1ヶ月とは、育児休業開始日の前日から1ヶ月ごとにさかのぼり、区切った期間のこと
- 完全月とは、1ヶ月間、丸々あることをいう
- 賃金支払基礎日数が11日以上あっても、「完全月」でなければ、育児休業給付金の受給要件を満たすことはできない
- 育児休業開始前2年間には、前職の雇用保険加入期間も含む
- 傷病手当金を受給している期間は、賃金支払基礎日数に含めない
育児休業給付金は、育児休業中の所得(収入)を補償するための制度です。
育児休業を取得したのに、給付金が支給されないんじゃ、ゆっくり子育てに専念できませんよね。
ぜひ、僕みたいな失敗をしないように、制度を正しく理解し「出産・育児に係る制度」を積極的に利用してみてください。
なお、令和2年8月1日より、「賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヵ月以上」の受給要件に、「賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上」という考え方が追加になっています。
詳しくは、こちらの記事で説明していますので、ぜひ、チェックしてみてください。
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