この記事では、「雇用保険に加入できる人の条件」についてまとめています。
雇用保険の加入者は、
- 失業給付(失業保険)
- 育児休業給付
- 介護休業給付
- 一般教育訓練給付金
- 高年齢雇用継続給付
など、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに再就職の援助を行うことを目的とした給付を受けることができます。(受給には一定の条件があります)
保険料も、0.3%(2020年度の一般の事業)と、健康保険・厚生年金保険料と比べ、低めとなっているため、加入しておいて損はないと思います。
ただ、雇用保険に加入するためには、いつくかの条件を満たす必要がありますので、「正社員以外で勤務を考えている人」は、ぜひ、チェックしてみてください。
雇用保険の加入は、一定の「勤務時間」と「雇用見込み」が必要
まず、結論です。
- 雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みで加入できる
- パート、アルバイト、派遣労働者でも、条件を満たせば、雇用保険に加入できる
- 学生は、原則、雇用保険に加入できない
- 65歳以上の人は、「高年齢被保険者」として、雇用保険に加入できる
それでは、1つずつ説明していきます。
雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みで加入できる
雇用保険の加入条件は、次の2つの条件をいずれも満たす必要があります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
1週間の所定労働時間とは
「1週間の所定労働時間」とは、就業規則、雇用契約書等により、その人が通常の週に勤務すべきとされている時間のことです。
また、この場合の「通常の週」とは、祝祭日および年末年始の休日、夏季休暇などを含まない週をいいます。
なお、1週間の所定労働時間が定められていない場合は、次のように取り扱います。
- 週ごとに所定労働時間が違う場合:週平均の所定労働時間
- 所定労働時間が1ヶ月単位で定められている場合:1か月の所定労働時間を、12分の52で割った時間
- 所定労働時間が1年単位で定められている場合:1年の所定労働時間を52で割った時間
31日以上の雇用見込みとは
31日以上雇用が継続しないことが明確である場合以外は、この要件に該当することになります。
なので、次の場合には、雇用契約期間が31日未満であっても、原則として、31日以上の雇用が見込まれるものとして、雇用保険が適用されることになります。
- 雇用契約に更新する場合があるとの規定があり、31日未満での雇止めの明示がないとき
- 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績があるとき
具体的には、こんな感じです。
パート、アルバイト、派遣労働者でも、条件を満たせば、雇用保険に加入できる
パート、アルバイト、派遣労働者の方であっても、
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
の条件を満たせば、雇用保険に加入できます。
もし、上記の条件を満たしているのに、雇用保険への加入がない場合は、会社の社会保険担当者に相談してみましょう。(事業主は、雇用保険に加入させる義務があります)
学生は、原則、雇用保険に加入できない
学生については、基本的に雇用保険の対象外となります。
ただし、次のような人は、学生であっても雇用保険へ加入することができます。
- 卒業見込みであり、卒業後も引き続きその事業所で勤務する予定の人
- 休学中の人
- 通信制、夜間、定時制の学校における学生
- 出席日数を課程終了の要件としない学校に在学する人で、他の労働者と同様に勤務できると認められる人
65歳以上の人は、「高年齢被保険者」として、雇用保険に加入できる
2017年(平成29年)1月1日の雇用保険制度の改正により、雇用保険の適用範囲が拡大され、65歳以上の方でも「高年齢被保険者」として、雇用保険へ加入できるようになりました。
65歳未満の人と加入条件に違いはありませんので、
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
をいずれも満たす必要があります。
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雇用保険被保険者に関する具体例
厚生労働省が示している具体例を一覧にしておきます。
参考までに。
区分 | 被保険者となる者 |
被保険者とならない者 |
短時間就労者(パートタイマー) 派遣労働者 |
正社員等の者と同じく、次の2つの要件をともに満たせば被保険者となります。 ①1週間の所定労働時間が20時間以上であること。 ②31日以上の雇用見込みがあること。 |
左記①または②のいずれかの要件を満たさない場合は、被保険者となりません。 |
学生・生徒 |
昼間学生であっても、次に掲げる方は被保険者となります。 ①卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き同一事業所に勤務する予定の者。 ②休学中の方(この場合、その事実を証明する文書が必要となります) ③事業主の命により又は、事業主の承認を受け(雇用関係を存続したまま)大学院等に在学する者。 ④一定の出席日数を課程修了の要件としない学校に在学する者であって、当該事業において、同種の業務に従事する他の労働者と同様に勤務し得ると認められる方。(この場合、その事実を証明する文書が必要となります) |
学生・生徒等で、通信教育を受けている者・大学の夜間学部・高等学校の夜間又は定時制課程の者等以外の者(左記①から④に該当する者は除く)については、適用事業に雇用されても被保険者となりません。 |
法人の取締役及び合名会社等の社長、監査役、協同組合等の社団又は財団の役員等 |
法人の役員は原則として被保険者となりません。 しかし、同時に部長・支店長・工場長等会社の従業員としての身分も有している(=兼務役員)場合であって、就労実態や給料支払などの面からみて労働者的性格が強く、雇用関係が明確に存在している場合に限り、被保険者となります。(この場合、就業規則・登記事項証明書・賃金台帳・雇用契約書等の関係書類等の提出が必要となります) |
左記の区分に記載された法人等(以下「法人等」という。)の代表者(会長・代表取締役社長・代表社員等)は被保険者となりません。 また、法人等の役員等(取締役・執行役員・監査役等)についても、原則として被保険者となりません。 |
2以上の適用事業主に雇用される者 |
例えば在籍出向の場合など、その者の生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける事業所において被保険者となります。 |
従たる賃金を受ける事業所においては被保険者となりません(二重の資格取得はできません)。 |
試用期間中の者 | 本採用決定前の試用期間中であっても、雇用関係が存続し、適用要件を満たした就労であれば被保険者となります。 | |
長期欠勤者 | 賃金の支払いを受けていなくても、雇用関係が存続する限り被保険者となります。 | |
家事使用人 | 原則として、被保険者となりません。 | |
在日外国人 |
日本国に在住し、合法的に就労する外国人は、国籍(無国籍を含む。)のいかんを問わず被保険者となります。 また、外国人技能実習生として受け入れられ、技能等の修得をする活動を行う場合には、受入先の事業主と雇用関係にあるので、被保険者となる。 |
外国公務員および外国の失業補償制度適用を受けていることが立証された者は被保険者となりません。 外国人技能実習生のうち、入国当初に雇用契約に基づかない講習(座学(見学を含む)により実施され、実習実施期間の工場の生産ライン等商品を生産するための施設における機械操作教育や安全衛生教育は含まれない。)が行われる場合には、当該講習期間中は受入先の事業主と雇用関係にないので、被保険者となりません。 |
事業主と同居の親族 |
次のいずれにも該当する場合に限り、被保険者となる場合があります。 ①業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。 ②就業の実態が当該事業所における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。 具体的には、始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、賃金の決定・計算・支払方法・締切・支払いの時期などが、就業規則その他これに準ずるものに定められ、その管理が他の労働者と同様になされていること。 ③事業主と利益を一にする地位(取締役等)にないこと。(この場合、登記事項証明書、当該事業所に雇用されている他の労働者の出勤簿などの関係書類等の提出が必要となります) |
個人事業の事業主(実質的に代表者の個人事業と同様に認められる法人を含む)と同居している親族は、原則として被保険者となりません。 ただし、左記の①~③のいずれにも該当する場合に限り、被保険者となる場合があります。 |
国外で就労する者 |
出張や海外支店等への転勤によって国外で働く場合、海外の現地法人等へ出向する場合には、国内の出向元との雇用関係が継続している限り被保険者となります。 |
海外で現地採用される者は、被保険者となりません。 |
船員 |
船舶所有者に雇用されている間は、乗船している船舶が航行する領域にかかわりなく被保険者となります。 船員法に規定する特定の船舶に乗り組んで労務を提供することを内容とする「雇入契約」(乗船契約)の間のみならず、船内で使用されることを内容としない「雇用契約」(予備船員としての契約)が締結される場合にも、その間において継続して被保険者となります。 |
船員であって、特定漁業以外の漁船に乗り組むために雇用される者(1年を通じて雇用される場合は除く)は、被保険者となりません。 |
公務員 | 国、県、市町村その他これに準ずる事業に雇用されている者で、離職時に受ける諸給与が失業等給付の内容を超える者は被保険者となりません。 | |
生命保険会社等の外務員・外交員・営業部員等 | 職務の内容や服務の態様について事業主の指揮監督を受けてその規律の下での労働を提供し、それに基づいて給与が算出されているなど、雇用関係が明確に存在している場合は被保険者となります。 |
雇用関係が明確に存在していない場合は、被保険者となりません。 |
在宅勤務者 ※労働日の全部またはその大部分について事業所への出勤が免除され、かつ、自己の住所で勤務することを常とする者 |
事業所勤務と同一の就業規則等の諸規定(その性質上在宅勤務者に適用できない条項を除く。)が適用され、次の5つの要件をすべて満たせば被保険者となります。 ①指揮監督系統が明確なこと。 ②拘束時間等が明確なこと。 ③各日の始業・終業時刻等の勤務時間管理が可能なこと。 ④報酬が、勤務した時間または時間を基礎としていること。 ⑤請負・委任的でないこと。(この場合、就業規則、賃金規定などの関係書類等の提出が必要となります。) |
左記の5つの要件すべて満たさなければ、被保険者となりません。 |
出典:厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き」
雇用保険に加入しているかどうかを確認するには?
一番簡単なのは、給与明細をチェックすることです。
雇用保険に加入している人は、原則、雇用保険料が徴収されているはずですので。
ちなみに、雇用保険料(2020年4月の一般の事業)は、次のようになっています。
参考までに。
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まとめ
ここで、「雇用保険に加入できる人の条件」についておさらいです。
- 雇用保険の加入条件は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあること
- 条件を満たせば、パート、アルバイト、派遣労働者でも、雇用保険に加入できる
- 学生は、原則、雇用保険に加入できない(通信制、夜間、定時制、休業中などを除く)
- 65歳以上の人は、2017年より「高年齢被保険者」として、雇用保険に加入できるようになった
雇用保険に加入していることで、失業(転職)や育児・介護休業などをされたときに給付を受けることができます。
保険料も比較的安いため、積極的に雇用保険を活用してみてください。
なお、失業(転職)や育児・介護休業時の給付については、こちらの記事で紹介しています。
参考までに。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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