訪問看護ステーションの人材不足は、深刻です。
それは、ただでさえ、人手が足りないと言われている看護師市場(勤務先)の中でも、ダントツです。
ただ、人手不足というと、
「その仕事に人気がないから・・・」
と思いがちですが、訪問看護の場合はちょっと違います。
というのも、訪問看護ステーションは、ここ数年で急激に増えていて、それによって、需要(求人数)が増加しているからです。
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訪問看護ステーションの増加状況については、こちらの記事でまとめています。
ちなみに、
- 訪問看護師として働いている人
- 訪問看護ステーションでの勤務を希望する看護師
も増えています。
そこで、この記事では、訪問看護ステーションにおける、
- 人手不足の状況(求人倍率)
- 訪問看護を希望する看護師が、重視するポイント(条件)
- 訪問看護希望者(求職者)の年齢層
- 経営(運営)主体ごとの、給与と働き方の違い
について紹介します。
「訪問看護に興味があるんだけど・・・」
という看護師さんに読んでいただけると嬉しいです。
なお、この記事で紹介している各種データは、
の結果をもとに、僕が作成したものです。
また、引用させていただきました表などについては、記事の中で明記しています。
訪問看護希望者の70%以上が、40歳以上!
まず、結論です。
- 訪問看護ステーションの求人倍率は、「3.10」で人手不足No.1
- 訪問看護の希望者(求職者)は、「勤務時間、給与、看護内容」を重視する
- 「40歳以上が、70%!?」の訪問看護希望者
- 訪問看護師として働くなら、社会福祉法人か医療法人を選ぼう
- 准看護師が訪問看護で働くのは、かなり厳しい!?
それでは、1つずつ説明していきます。
訪問看護ステーションの求人倍率は、「3.10」で人手不足NO.1
令和元年度(2019年度)の人手不足を状況を表す求人倍率は、訪問看護ステーションで「3.10倍」となっていて、他の施設・事業所と比べて、ダントツの高さとなっています。
このとおり。
求人数・求職者の内訳は、次のとおりです。
施設種別 | 求人数(人) | 求職数(人) | 求人倍率 |
訪問看護ステーション | 15,367 | 4,962 | 3.10 |
病院(500床以上) | 10,173 | 8,863 | 1.15 |
病院(200~499床) | 25,076 | 15,324 | 1.64 |
病院(20~199床) | 34,403 | 17,328 | 1.99 |
診療所(有床) | 4,643 | 8,318 | 0.56 |
診療所(無床) | 14,861 | 17,186 | 0.86 |
介護老人保健施設 | 7,150 | 6,485 | 1.10 |
特別養護老人ホーム | 7,777 | 6,170 | 1.26 |
全 体 | 158,602 | 67,710 | 2.34 |
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このデータだけ見ちゃうと、
「訪問看護って、ダントツで人気がないんだな~」
って思っちゃいますが、直近3年間の求人倍率(求人数・求職者数)の推移をみてみると、ガラッと印象が変わります。
【訪問看護における求人倍率の推移】
年度 | 求人数(人) | 求職数(人) | 求人倍率 |
2016 | 14,112 | 3,826 | 3.69 |
2017 | 14,687 | 3,885 | 3.78 |
2018 | 15,266 | 5,243 | 2.91 |
2019 | 15,367 | 4,962 | 3.10 |
2018年から求職者(訪問看護希望者)が3割以上増え、求人倍率が一気に下がっています。
つまり、「訪問看護の人気が急上昇!?」ってことです。
在宅医療のニーズがますます増えていくことを考えると、これからも訪問看護師は増え続けていく職種です。
訪問看護の希望者(求職者)は、「勤務時間、給与、看護内容」を重視する
訪問看護を希望する看護師さんは、次の3つのポイントを重視して、訪問看護ステーションでの勤務を希望しています。
- 勤務時間 33.9%
- 看護内容 31.5%
- 通勤時間 26.3%
他の施設や事業所を希望する看護師さんが重視するポイントと比べると、勤務時間と看護内容の項目が高くなっています。
このとおりです。
出典:日本看護協会「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析報告書」
これは、
- 病院などと違い、不規則な勤務体制がない
- 看護師としてのやりがいを求めて、訪問看護で働く人が多い
というのが関係しているのだと思います。
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「40歳以上が、70%以上」の訪問看護ステーション希望者
そもそもの看護職員の転職希望者は、会社員などの一般職と比べ、年齢層が高めなんですが、訪問看護の希望者は、さらに年齢層が高めとなっています。
こんな感じです。
訪問看護希望者は、
- 40歳以上 71.3%
- 50歳以上 34.1%
- 60歳以上 8.1%
となっており、40歳以上の人が、7割以上です。
看護職全体では、
- 40歳以上 63.0%
- 50歳以上 33.5%
- 60歳以上 11.7%
ですので、訪問看護希望者の年齢層が高めなのがわかると思います。
これは、次のような理由が考えられます。
- ある程度の看護経験が求められる(訪問看護は、ほぼ単独行動のため)
- 病院などの勤務で人間関係に疲れた
ちなみに、年齢を重ねてから訪問看護を希望する看護職員さんは増えています。
こんな感じです。
出典:日本看護協会「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析報告書」
訪問看護師として働くなら、社会福祉法人か医療法人を選ぼう
訪問看護ステーションは、法人格さえあれば開設が可能なため、色々な経営(運営)主体があります。
2019年では、次のような割合になっています。
出典:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」
この中から、比較的、比率の高い
- 社会福祉法人
- 医療法人
- 営利法人(株式会社など)
の勤務状況等(平均)について、厚生労働省「介護事業経営実態調査」をもとに比較してみます。
項 目 | 社会福祉法人 | 医療法人 | 営利法人 |
売上高(月間) | 2,297,000円 | 2,303,000円 | 2,999,000円 |
売上に対する給与費の割合 | 86.4% | 78.3% | 76.6% |
利益率(税引後) | 0.8% | 6.1% | 3.5% |
職員数 | 7.1人 | 5.3人 | 8.6人 |
内、看護職員数 | 5.2人 | 3.9人 | 4.7人 |
職員1人あたりの月間訪問回数 | 44.4回 | 52.2回 | 45.2回 |
看護職員1人あたりの月間訪問回数 | 60.7回 | 70.6回 | 81.9回 |
売上高は、ほぼ変わりませんが、職員に支給する給与費が、
- 社会福祉法人 86.4%
- 医療法人 78.3%
- 営利法人 76.6%
と営利法人が、低くなっています。
また、職員中の看護職員の割合が、営利法人だけ、かなり少なくなっています。
これは、営利法人の場合、PT・OTさんを多く採用しているってことなんだと思います。
事実、「看護職員1人あたりの月間訪問回数」では、営利法人が、ダントツで多くなっていますし。(看護師さんに負担が集中しているのかもしれません)
続いて、職種別の給与費(月間)の比較です。
(単位:円)
職種(常勤) | 社会福祉法人 | 医療法人 | 営利法人 |
看護師 | 463,077 | 453,372 | 416,309 |
准看護師 | 330,218 | 352,805 | 327,378 |
理学療法士 | 437,566 | 425,710 | 404,078 |
作業療法士 | 407,421 | 425,913 | 405,067 |
圧倒的に、社会福祉法人ですね。
次いで、医療法人となっています。
以上のことから、この調査を見る限りでは、
「訪問看護やるなら、社会福祉法人か医療法人で!!」
ってことですね。
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准看護師が訪問看護で働くのは、かなり厳しい!?
訪問看護ステーションで働く看護職員は、9割以上が看護師です。
就業している全看護職員中の約22%が准看護師ですので、かなり少ない印象です。
これは、「診療報酬・介護報酬の減算」が大きく影響しており、訪問看護の場合、看護師による訪問と准看護師による訪問で報酬が変わるというのが主な理由です。
具体的には、
医療保険「訪問看護基本療養費(Ⅰ)」
保健師、助産師、看護師、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による場合
- 週3日目まで 5,550円
- 週4日目以降 6,550円
准看護師による場合
- 週3日目まで 5,050円
- 週4日目以降 6,050円
介護保険「指定訪問看護ステーションの場合」
准看護師の場合は、次の所定単位数の10%減算(90/100)とする。
- 所要時間20分未満の場合 313単位
- 所要時間30分未満の場合 470単位
- 所要時間30分以上1時間未満の場合 821単位
- 所要時間1時間以上 1時間30分未満の場合 1,125単位
って感じです。(2021年4月1日現在)
同じ内容、同じ時間の訪問に行って、報酬が低いというのは、運営側からすれば、かなり痛手になりますからね・・・
ただ、准看護師が訪問看護ステーションで働けないわけではありませんので、「訪問看護をやりたい」という人は、いきなり諦めてしまわずに、まず、探してみることをオススメします。
「訪問看護ステーションで働く看護職員は、9割以上が看護師」ってことは、逆に言えば、全体の1割弱は、准看護師ってことですので。
まとめ
ここで、「訪問看護ステーションの労働環境」について、おさらいです。
- 訪問看護の人材不足は深刻だが、希望者は急増している
- 「勤務時間、給与、看護内容」を重視して訪問看護を選ぶ人が多い
- 訪問看護に年齢制限はない!(40歳以上の人が、71.3%)
- 訪問看護やるなら、社会福祉法人か医療法人がオススメ
- 准看護師が訪問看護で働くのは、ハードル高め
在宅サービスは、社会保障費の問題(財政状況の悪化など)もあり、国が強烈に推進しています。
そういった背景からしても、訪問看護ステーション(訪問看護師)の需要は増え続けていきます。
もし、訪問看護に興味があり、「どうしようかな~」と迷っているなら、ぜひ、チャレンジしてみてください。
現在は、強烈な売り手市場になっていて、働きやすい職場を見つけやすいですし。
ちなみに、「どうやって探したらいいの?」という人は、無料で利用できる転職エージェント( レバウェル看護 (旧:看護のお仕事) など)を活用することをオススメします。
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最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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