一般的に、「病院薬剤師の給料(年収)は安い」って、イメージがありますよね。
ただ、実際は、そんなことありません。
というのも、厚生労働省が2021年(令和3年)に行った調査結果によると、薬剤師さんの給料(年収)は、
- 診療所
- 保険薬局(管理薬剤師の場合)
- 病院
の順に高くなっているからです。
そこで、この記事では、
- 薬剤師の平均給料
- 地方病院の薬剤師の給料(うちのグループをメインに)
を比較し、その内容をまとめています。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 薬剤師の給料ってどのくらい?
- 病院薬剤師って、給料が安いって聞くけど、ほんと?
- 薬剤師が、病院で働く「やりがい」ってなんなの?
薬剤師の給料は、診療所、保険薬局(管理薬剤師)、病院の順で高く、都市部より地方の方が高い
まず、結論です。
- 経験年数1~4年の薬剤師さんの基本給(所定内賃金)は「30万~35万円」
- 41.1歳、勤続8.9年の薬剤師の平均年収は「5,805,400円(残業手当含む)」
- 薬剤師の給料は、診療所、保険薬局(管理薬剤師の場合)、病院の順で高い
- 地方病院の給料は、薬剤師全体の平均給与より高い
- 地方の慢性期(療養)病院なら「ライフワークバランス・やりがい・給料」をあきらめなくていい
それでは、これらの理由について説明していきます。
薬剤師の経験年数別、男女別平均給与【令和3年(2021年)】
薬剤師さんの給料は、他の医療職種と比べ高く、経験年数が1~4年でも
- 男性 年収 5,033,800円
- 女性 年収 4,450,400円
となっています。
こんな感じです。
【薬剤師の基本給と年間賞与一覧(2021年)】
(単位:円)
経験年数 | 男 | ||
所定内賃金 | 年間賞与 | 年収 | |
1~4年 | 351,300 | 818,200 | 5,033,800 |
5~9年 | 378,300 | 1,165,000 | 5,704,600 |
10~14年 | 411,100 | 1,278,600 | 6,211,800 |
15年以上 | 469,900 | 1,095,200 | 6,734,000 |
全体 | 405,000 | 1,002,400 | 5,862,400 |
経験年数 | 女 | ||
所定内賃金 | 年間賞与 | 年収 | |
1~4年 | 306,200 | 776,000 | 4,450,400 |
5~9年 | 333,800 | 932,900 | 4,938,500 |
10~14年 | 341,000 | 1,010,400 | 5,102,400 |
15年以上 | 392,800 | 1,159,600 | 5,873,200 |
全体 | 349,100 | 933,700 | 5,122,900 |
また、年収は「所定内賃金×12ヶ月+年間賞与」にて算出しています。
わかりやすく、グラフにしてみます。
「さすが薬剤師!」って感じです。
経験年数1~4年で、「年収440~500万円」ってことは、初任給でも、400万円レベルですからね。
ちなみに、他の医療・福祉系職種の給料(年収)は、次のようになっています。
平均的な働き方と平均給与の推移「2013~2021年」
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」における、「平均的な薬剤師」は、次のようになります。
- 年齢 41.1歳
- 勤続年数 8.9年
- 残業時間 11時間
- 月額給与 403,600円
- 年収 5,805,400円
こんな感じです。
年 | 年齢 | 平均勤続年数 | 月の労働時間 | 月の残業時間 | 支給額 | 所定内賃金 | 年間賞与 | 年収 |
2013 | 39.1 | 7.6 | 162 | 12 | 370,600 | 340,400 | 879,400 | 5,326,600 |
2014 | 38.6 | 7.0 | 160 | 11 | 376,000 | 346,500 | 799,700 | 5,311,700 |
2015 | 38.7 | 7.1 | 163 | 11 | 381,600 | 353,500 | 755,700 | 5,334,900 |
2016 | 37.4 | 6.5 | 165 | 10 | 363,500 | 336,500 | 787,000 | 5,149,000 |
2017 | 39.0 | 7.2 | 164 | 10 | 388,300 | 360,800 | 778,600 | 5,438,200 |
2018 | 38.6 | 7.6 | 162 | 12 | 379,900 | 347,100 | 877,100 | 5,435,900 |
2019 | 39.4 | 7.9 | 160 | 11 | 398,600 | 367,800 | 833,300 | 5,616,500 |
2020 | 41.2 | 8.5 | 162 | 8 | 394,200 | 371,500 | 920,900 | 5,651,300 |
2021 | 41.1 | 8.9 | 163 | 11 | 403,600 | 372,300 | 962,200 | 5,805,400 |
計算方法は、「支給額×12ヶ月+年間賞与」です。
また、所定内賃金(残業代等の各種手当てを差し引いた額)で、年収計算すると次のようになります。
- 2013年:4,964,200円
- 2014年:4,957,700円
- 2015年:4,997,700円
- 2016年:4,825,000円
- 2017年:5,108,200円
- 2018年:4,943,800円
- 2019年:5,246,900円
- 2020年:5,378,900円
- 2021年:5,429,800円
はっきり言って、これらの金額を見る限りでは、うちの病院とほとんど変わらないです。
ちなみに、うちの法人の薬剤師さんのモデル給料(概算)は、こんな感じです。
- 役職なし(一般職)
- 残業なし
- 経年年数 15年
- 月額給与 350,000円
- 年収 5,200,000円
病院・診療所・保険薬局別 薬剤師の平均給料(年収)
厚生労働省が令和3年(2021年)に実施した「医療経済実態調査」によると、薬剤師さんの平均年収(給料)は、
- 診療所
- 保険薬局(管理薬剤師の場合)
- 病院
の順で高くなっています。
(単位:円)
機関 | 開設者・職種 | 月額給与 | 年間賞与 | 年収 |
病院 | 国立 | 371,074 | 1,264,195 | 5,717,085 |
公立 | 381,349 | 1,359,661 | 5,935,847 | |
公的 | 378,456 | 1,253,198 | 5,794,673 | |
社会保険関係法人 | 379,760 | 1,428,398 | 5,985,523 | |
医療法人 | 370,253 | 803,885 | 5,246,915 | |
個人 | 365,790 | 638,930 | 5,028,415 | |
診療所 | 個人 | 843,763 | 1,905,022 | 12,030,174 |
医療法人 | 555,038 | 210,874 | 6,871,328 | |
保険薬局 | 個人 | 288,407 | 221,050 | 3,681,933 |
法人(管理薬剤師) | 538,274 | 755,572 | 7,214,857 | |
法人(薬剤師) | 347,010 | 571,957 | 4,736,072 |
グラフにするとこんな感じです。
一般的に、「病院より、調剤薬局の方が給料が高い」と言われます。
でも、この調査においては、管理薬剤師でない場合、病院薬剤師の方が平均年収は高くなっています。
ただし、管理薬剤師となると、平均年収が「7,214,857円」で、
- 病院薬剤師より、120~220万円高く
- 保険薬局(一般の薬剤師)より、240万円以上高く
なります。
また、病院だけで比較してみると、公立や社会保険関係法人の年収が高く、医療法人や個人は低くなっています。
診療所については、見ていただいたとおり、凄まじい金額になっています。
- 個人の診療所「12,030,174円」
- 医療法人の診療所「6,871,328円」
僕としては、「診療所の給料って、こんなに高かったっけ!?」と、ちょっと違和感がありますが、転職をするときには、「診療所の薬剤師」という選択肢を入れておいた方がいいかもしれません。
実際に、これだけの給与を出しているところがあるってことですからね。
ちなみに、保険薬局(調剤薬局)の規模別に管理薬剤師と薬剤師の給与を比較してみると、圧倒的に違うことがはっきりします。
まぁ、役割と責任の重さが違うので、誰でもできるってわけではないのかもしれませんが、魅力的な金額ですよね。
【管理薬剤師の保険薬局規模別給与】
店舗数 | 管理薬剤師 | ||
月額給与 | 年間賞与 | 年収 | |
1店舗 | 680,867 | 317,864 | 8,488,268 |
2~5店舗 | 607,412 | 474,435 | 7,763,378 |
6~19店舗 | 560,034 | 609,357 | 7,329,762 |
20店舗以上 | 451,495 | 1,085,591 | 6,503,533 |
全体 | 538,066 | 750,265 | 7,207,054 |
【薬剤師の保険薬局規模別給与】
店舗数 | 薬剤師 | ||
月額給与 | 年間賞与 | 年収 | |
1店舗 | 400,927 | 476,390 | 5,287,513 |
2~5店舗 | 352,110 | 397,320 | 4,622,637 |
6~19店舗 | 370,367 | 432,509 | 4,876,911 |
20店舗以上 | 326,497 | 696,919 | 4,614,883 |
全体 | 346,139 | 566,740 | 4,720,402 |
計算方法は、「月額給与×12ヶ月+年間賞与」です。
グラフにすると、こんな感じです。
違いがはっきりしますよね。
薬剤師が持っている「病院勤務のイメージ(先入観)」
人材紹介サービスを行っている会社の担当者さんに聞いたところ、仕事を探している薬剤師さんは、次のように考えている人が多いそうです。
- ほとんどの薬剤師さんが、調剤薬局を希望する
- 病院への転職希望者は少ない(つまり、人気なし・・・)
- 調剤薬局は、事業所数が圧倒的に多く、収入が高いが、勤務時間が比較的長く、勤務時間帯が遅い
- 病院の薬剤師は給料は安いが、医師や看護師などの多職種と協同して、患者に直接関われるため、やりがいと学びが大きい
つまりは、
「ほとんどの人は、調剤薬局での勤務を希望していて、病院勤務を希望する薬剤師さんは、かなりの貴重」
ってことなんですよね。
そして、そのネックとなってるのが、「給料が安い」というイメージです。
ただ、「病院勤務は、学びが大きく、やりがいがある」と思ってくれてることが唯一の救いです。
というのも、「給料が安い」という問題さえ解消されれば、病院勤務は、薬剤師さんにとって、良い職場ってことになりますからね。
【関連記事】
薬剤師の給与は、都市部より地方の方が高くなる
薬剤師さんの給料は、都市部より、地方の方が比較的高いと言われています。
これは、強烈な人材不足による「需給バランス」の影響です。(地方の薬剤師不足は、ほんと深刻なんで・・・)
つまり、薬剤師さんに入職いただくために、地方の病院は頑張っているってことなんです。
もちろん、給料だけじゃなく、労働環境すべてにおいて。
なので、日本にある病院(令和元年5月現在、8,324病院あります)すべての給与が安いと思ってほしくないです。
そもそも、病院は都市部に多いため、平均値で見ちゃうと、都市部の給与額に引っ張られちゃいますし。
ちなみに、令和3年(2021年)の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師さんの都道府県(地域)別平均給与は次のようになっています。
【薬剤師 都道府県別平均給与一覧(2021年)】
都道府県 | 年齢 | 平均年収 |
北海道 | 43.0 | 5,825,100 |
青森 | 39.2 | 5,994,600 |
岩手 | 37.8 | 5,859,600 |
宮城 | 39.8 | 5,639,800 |
秋田 | 37.8 | 5,479,300 |
山形 | 36.2 | 4,776,600 |
福島 | 40.5 | 5,251,900 |
茨城 | 44.9 | 6,492,200 |
栃木 | 38.2 | 6,073,600 |
群馬 | 35.2 | 6,052,000 |
埼玉 | 40.2 | 6,196,300 |
千葉 | 39.9 | 6,054,700 |
東京 | 40.0 | 5,942,700 |
神奈川 | 43.6 | 5,997,500 |
新潟 | 40.4 | 5,458,800 |
富山 | 45.2 | 6,176,800 |
石川 | 49.4 | 6,381,800 |
福井 | 41.0 | 5,905,100 |
山梨 | 47.6 | 6,080,500 |
長野 | 42.9 | 5,274,600 |
岐阜 | 43.0 | 6,063,200 |
静岡 | 42.4 | 5,970,000 |
愛知 | 42.4 | 6,066,300 |
三重 | 48.9 | 5,875,100 |
滋賀 | 41.7 | 6,396,200 |
京都 | 38.9 | 5,592,100 |
大阪 | 43.7 | 5,370,700 |
兵庫 | 39.7 | 5,411,600 |
奈良 | 42.3 | 5,763,200 |
和歌山 | 42.7 | 5,377,800 |
鳥取 | 44.2 | 5,601,600 |
島根 | 40.8 | 6,129,100 |
岡山 | 41.8 | 5,001,600 |
広島 | 35.6 | 5,873,900 |
山口 | 46.9 | 6,671,200 |
徳島 | 44.9 | 5,044,400 |
香川 | 40.5 | 6,528,700 |
愛媛 | 38.9 | 5,414,800 |
高知 | 43.3 | 6,030,800 |
福岡 | 43.6 | 6,008,700 |
佐賀 | 49.0 | 5,027,200 |
長崎 | 46.6 | 5,144,200 |
熊本 | 37.8 | 5,259,100 |
大分 | 42.3 | 5,217,800 |
宮崎 | 40.4 | 4,935,600 |
鹿児島 | 51.2 | 5,436,100 |
沖縄 | 44.2 | 5,876,400 |
わかりやすくグラフにすると、こんな感じです。
また、平均年収が多い順に並べると、こうなります。
薬剤師さんの給与って、ほんと地域によって、バラツキがあるんですよね。
1位の山口県「6,671,200円」と、最下位の山形県「4,776,600円」を比較すると、約190万円ほどの違いがありますからね。
薬剤師って、みんなどこで働いているの?【勤務先と割合】
薬剤師の勤務先は、
- 薬局 58.7%
- 病院 17.4%
- 医薬品会社 12.1%
の順で多くなっています。
【薬剤師の勤務先と割合一覧(2020年12月31日現在)】
勤務先 | 薬剤師数(人) | 割合(%) |
薬局 | 188,982 | 58.7 |
病院 | 55,948 | 17.4 |
診療所 | 5,655 | 1.8 |
介護施設 | 988 | 0.3 |
大学 | 5,111 | 1.6 |
医薬品会社 | 39,044 | 12.1 |
行政機関 | 6,776 | 2.1 |
その他 | 19,462 | 6.0 |
合計 | 321,966 | 100.0 |
グラフにするとこんな感じです。
病院勤務の薬剤師って、全体の17.4%(55,948人)で、結構いるんです。
そういう意味でも、給料を含め、労働環境はそんなに悪くないと思うんです。
ただ、なんとなくのイメージが悪いだけで・・・
薬剤師の人手不足の状況【有効求人倍率1.91倍って、どういうこと?】
2021年(令和3年)の薬剤師の有効求人倍率は、「1.91倍」となっています。
職業全体の有効求人倍率が「1.03倍」なので、かなりの人手不足ということになります。
ただ、以前に比べると、かなり人手不足が改善されてきています。
このとおり。
2013年は、「6.91倍」ととんでもない倍率になっています。
そこに比べれば、「1.91倍、なんて・・・」って感じですけど、まだまだ足りてないですね。
なので、現在は、就職・転職がしやすい職種ということになります。
ただ、このグラフの傾向からすると、早めに転職しておいたほうがいいかもしれませんね。(今の職場に不満を感じているならですが)
ちなみに、求人倍率とは、仕事を探す人1人に対し、何人分の求人(仕事)があるかを表している指標です。
つまり、労働市場の「需給バランス」を表すものです。
薬剤師の2021年の有効求人倍率は「1.91倍」ですので、薬剤師1人に対して、約2人分の仕事があるってことです。
逆に言うと、2つの病院や薬局が、薬剤師1人を取りあっている状態です。
【関連記事】
「求人倍率について、もっと詳しく知りたい」という人は、こちらの記事を。
地方の慢性期(療養)病院で、「ライフワークバランス・やりがい・給与」をあきらめない
「病院薬剤師って、夜勤はあるし、残業も多いし、休みだって・・・」
ってイメージを持っている人が多いかもしれませんが、すべての病院がこんな労働環境なわけではありません。(たしかに、大学病院などの救急病院の勤務だと・・・かもしれませんが)
たとえば、
- 臨床の現場で患者と直接関わる
- 医師や看護師などの多職種と協同することで「チーム医療」を学ぶ
- やりがいを感じながら、納得の給料をもらう
- ライフワークバランスを重視(夜勤なし、残業なし、有給休暇取得率90%以上)
って職場が普通にありますよ。
地方の慢性期(療養)病院なら。
なので、「ライフワークバランス・やりがい・給与」のすべてをあきらめることなく、探してみてください。
特に、子育て中のパパ・ママ薬剤師さんには、オススメだと思いますので。
ただ、労働環境のいい病院を探す(情報収集をしっかりする)と言っても、なかなか個人では難しいですよね。
そんなときは、薬剤師に特化した無料で利用できる転職エージェント(ファルマスタッフ ・お仕事ラボなど)を活用してみてください。
エージェントサービスなら、医療機関の情報が豊富のため、あなたの希望条件にあった病院をいくつも探してくれます。
また、
- 面接などの日程調整
- 給料や休日などの条件面の交渉
- 福利厚生制度(院内保育室の利用など)
- どういう患者が多いのか?
などの「面倒な手続き」や「気になったことの確認(情報収集)」も、あなたの代わりにやってくれます。
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なので、「今すぐ、転職する気はないんだけど・・・」という人でも、情報収集という意味で、登録しておいて損はないと思いますよ。
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まとめ
ここで、「病院薬剤師の給与とやりがい」についておさらいです。
- 病院薬剤師の給料は、「安いところが比較的多い」だけ
- 臨床の現場で患者と直接関わり、医師や看護師などの多職種と協同し、「チーム医療」を学べる
- 地方の慢性期(療養)病院なら、「ライフワークバランス・やりがい・給与」をあきらめる必要なし
僕は、薬剤師さんの採用を何年も担当してきて、
- 「病院薬剤師の給料は安い」というイメージが先行して、病院の薬剤師採用を阻害しているんじゃないか?
- 平均給料が安いという理由で「病院薬剤師という選択肢」を、最初から外してしまうのは、求職者(薬剤師)にとっても、大きな機会損失なんじゃないか?
と思っています。
なので、病院での勤務を漠然としたイメージだけで判断せず、選択肢の1つとして色々と比較してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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