この記事では、所得税法における、
- 一般の寡婦(いっぱんのかふ)
- 特別の寡婦(とくべつのかふ)
- 寡夫(かふ)
について、紹介しています。
こんな人に読んでいただけると嬉しいです。
- 寡婦(寡夫)ってなんですか?
- 寡婦(寡夫)の詳細な要件を知りたい
- 仕事で、年末調整を担当している
【追記(令和2年11月1日)】
令和2年度の税制改正により、未婚のひとり親に対する税制上の措置として、「ひとり親控除の新設」「寡婦(寡夫)控除の見直し」が行われています。
詳しくは、こちらの記事でまとめていますので、ぜひ、チェックしてみてください。
令和2年分以降の「ひとり親控除・寡婦控除」における扶養控除等申告書の書き方(申告のしかた)については、こちらの記事を。
一般の寡婦・特別の寡婦・寡夫に該当すると、所得税が安くなる
寡婦(寡夫)に該当する人は、「寡婦控除・寡夫控除」という所得控除が受けられるため、所得税が安くなります。
所得控除額は、
- 一般の寡婦 27万円
- 特別の寡婦 35万円
- 寡夫 27万円
となっていますので、所得税率を5%とし、ざっくり試算した場合、
- 一般の寡婦 13,500円
- 特別の寡婦 17,500円
- 寡夫 13,500円
が節税となります。
それでは、寡婦(寡夫)の要件について、1つずつ説明していきます。
一般の寡婦の要件(寡婦控除の対象となる人)
一般の寡婦とは、次の5つのうち、いずれかに該当する人のことをいいます。
- 夫と死別した後、婚姻をしていない人で、扶養親族または生計を一にする子がいる人
- 夫と離婚した後、婚姻をしていない人で、扶養親族または生計を一にする子がいる人
- 夫の生死が明らかでない人、扶養親族または生計を一にする子がいる人
- 夫と死別した後、婚姻をしていない人で、合計所得金額が500万円以下の人
- 夫の生死が明らかでない人で、合計所得金額が500万円以下の人
一覧表にすると、こんな感じです。(〇が付いているところが、寡婦に該当します)
扶養親族がいる | 生計を一にする子がいる | 合計所得金額が500万円以下 | |
夫と死別した後、婚姻をしていない人 | 〇 | 〇 | 〇 |
夫と離婚した後、婚姻をしていない人 | 〇 | 〇 | × |
夫の生死が明らかでない人 | 〇 | 〇 | 〇 |
特別の寡婦の要件(寡婦控除の対象となる人)
特別の寡婦とは、次の3つの要件、すべてに該当する人のことをいいます。
- 夫と死別または夫と離婚した後、婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない人
- 扶養親族である子どもがいる
- あなたの合計所得金額が500万円以下
寡夫の要件(寡夫控除の対象となる人)
寡夫とは、次の3つの要件、すべてに該当する人のことをいいます。
- 妻と死別または妻と離婚した後、婚姻をしていない人や妻の生死が明らかでない人
- 生計を一にする子どもがいる
- あなたの合計所得金額が500万円以下
寡婦(寡夫)の判断は、その年の12月31日現在の状況で行う
「一般の寡婦・特別の寡婦・寡夫」に該当するかどうかは、原則、その年の12月31日の現況で判断します。
たとえば、
「2019年分であれば、2019年12月31日現在の状況で判断する」
ってことです。
合計所得金額500万円以下とは?【所得と収入の違い】
寡婦(寡夫)の条件である、「合計所得金額500万円以下」とは、あくまで所得金額です。
収入と所得は、混同しやすいですが、別物なので注意してください。
なお、収入と所得の違いは、次のとおりです。
- 収入とは、総支給額から交通費(非課税分)を除いた額
- 所得とは、総支給額から交通費(非課税分)と必要経費を除いた額
たとえば、収入が給与のみの場合、
「総支給額から交通費(非課税分)を引いた金額が、688万8,889円以下」
であれば、合計所得金額500万円以下に該当します。
また、厚生年金や国民年金などの年金収入のみの場合、
「収入が680万5,882円以下」
であれば、合計所得金額500万円以下に該当します。
【関連記事】
「扶養親族」と「生計を一にする親族」の違い
ちょっと、ごっちゃになりやすいですが、
- 扶養親族
- 生計を一にする親族
は、別物です。(同じではありません)
扶養親族とは、生計を一にする親族のうち、年間の合計所得が38万円以下(令和2年分以後は48万円以下)の人をいい、
生計を一にする親族とは、同居している、もしくは別居であっても送金を行なうなど、あなたと一体的に生活している人のことをいいます。
なので、扶養親族であれば、必ず生計を一にしていますが、生計を一にしているからと言って、必ずしも扶養親族というわけではありません。
わかりやすく、例えてみると、
- あなたの所得が、500万円
- 子どもの所得が、500万円
が同居している場合は、生計を一にする親族になりえますが、扶養親族にはならないということです。
ただ、寡婦(寡夫)の要件については、
「生計を一にする子については、総所得金額等が38万円以下(令和2年分以後は48万円以下)に限る」
という条件が追加されていますので、僕としては、あんまり違いはないかも!?って、思っています。
未婚のひとり親は、寡婦(寡夫)には該当しない
寡婦(寡夫)控除というと、一般的に、ひとり親への税制優遇措置というイメージですが、未婚の母(父)については、対象になりません。
理由としては、「婚姻」が、寡婦(寡夫)の大きな条件になっているためです。
僕としては、ちょっと、違和感を感じますが、
「日本については、婚外子(婚姻届を出していない男女間に生まれた子)が少ないから、あまり問題にされてこなかった」
という背景があるのかな?と思っています。
ただ、個人住民税については、令和2年分から「単身児童扶養者」という言葉で、未婚のひとり親の人も優遇措置が受けられるようになります。
「もしかしたら、対象になるかも?」という人は、こちらの記事をご覧ください。
ちなみに、日本の婚外子の割合を世界各国と比べてみると、次のようになっています。
出典:厚生労働省「平成25年版厚生労働白書 -若者の意識を探る-」
2008年において、日本の婚外子の割合は、2.1%ですので、出生する子どもの約98%が結婚している夫婦から産まれていることになります。(2016年のデータでも、日本の婚外子の割合は、2.3%です)
また、他国を見てみると、
2位:フランス 52.6%
3位:デンマーク 46.2%
4位:英国 43.7%
5位:オランダ 41.2%
6位:アメリカ 40.6%
となっておりますので、かなりの違いがあることがわかります。
まとめ
ここで、「寡婦(寡夫)控除のポイント」についておさらいです。
- 寡婦(寡夫)に該当すると、「一般の寡婦27万円、特別の寡婦35万円、寡夫27万円」のいずれかの控除が受けられる
- 寡婦(寡夫)控除は、「婚姻」が大きな条件となっている
- 合計所得金額500万円以下は、給与収入688万8,889円以下で該当(給与収入のみの場合)
- 寡婦(寡夫)の判断は、原則、その年の12月31日現在の状況で行う
寡婦(寡夫)って、かなり馴染みのない言葉だと思います。
僕も、仕事で年末調整を担当するまでは、全く知らなかった言葉ですし。
ただ、「そんなの知りませんでした~」だと、せっかくの税制優遇が受けられなくなりますので、離婚(死別)をされている人は、「給与所得者の扶養控除(異動)申告書」の書き方を含め、職場の担当者に相談することをオススメします。
まぁ、しっかりしている担当者さんなら、色々な社会保険関係の手続きを通じて、寡婦(寡夫)に該当するかどうかを確認されると思いますが。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【あわせて読みたい】
コメント