転職・再就職の際に、雇用保険から支給される「再就職手当(いわゆる、就職お祝金)」ですが、
- そもそも、再就職手当を知らない人
- 再就職手当を知っていても、ハローワークの紹介で転職(就職)しないと、支給されないと思っている人
- パート、アルバイトだと再就職手当は支給されないと思っている人
は、すっごく多いです。
というのも、僕は、仕事柄、職員さんの社会保険手続き(退職手続きなど)を行うため、色々な相談を受けるのですが、ほとんどの人が知らないからです。
再就職手当のことを知らないと、
- ハローワークで仕事を探すつもりがない
- 失業手当をもらうつもりはない
- パート、アルバイトで働こうと思っている
という理由から、ハローワークの手続きをせず、本来、「再就職手当」を受け取ることができたにも関わらず、受け取れなくなってしまいます。(そういう人が、実際、多いと思います)
そこで、この記事では、再就職手当における、
- 制度の目的
- 支給要件
- 支給金額
- 手続きのしかた
- 注意するところ
について、わかりやすく、ポイントを絞って紹介します。
- 再就職手当は、民間の人材紹介サービス(転職エージェント)の利用でも支給される
- 再就職手当は、「8つの要件」を満たしたときに支給される
- パート・アルバイト・契約社員・派遣社員で働くときは、「雇用期間」と「雇用保険への加入有無」に注意する
- 支給金額は、自己都合退職で、最大「約65万円」
- 再就職手当の金額【令和6年8月1日以降】
- 手続きは、まず、ハローワークに離職票等を持っていき、求職申込みを行うこと
- 再就職手当は、ハローワークの紹介じゃなくていい(人材紹介サービスの利用でOK)
- 求人サイトの利用でも再就職手当は支給される(一部要件あり)
- 受給資格決定(ハローワークへ求職申し込み)前に、就職の内定をもらわないこと
- まとめ
再就職手当は、民間の人材紹介サービス(転職エージェント)の利用でも支給される
再就職手当をもらうには、いくつかのポイント(注意点等)があります。
それは、次の7つです。
- 再就職手当は、「8つの要件」を満たしたときに支給される
- パート・アルバイト・契約社員・派遣社員で働くときは、「雇用期間」と「雇用保険への加入有無」に注意する
- 支給金額は、自己都合退職で、最大「約65万円」
- 手続きは、まず、ハローワークに離職票等を持っていき、求職申込みを行うこと
- 再就職手当は、ハローワークの紹介じゃなくていい(人材紹介サービスの利用でOK)
- 求人サイトの利用でも再就職手当は支給される(一部要件あり)
- 受給資格決定(ハローワークへ求職申し込み)前に、就職の内定をもらわないこと
それでは、1つずつ、詳しく説明していきます。
再就職手当は、「8つの要件」を満たしたときに支給される
再就職手当とは、
「退職した人がハローワークで雇用保険(失業保険)の手続きを行い、基本手当(失業保険)の所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して再就職した場合に受け取ることのできる手当」
のことです。
つまり、退職してから、早期に再就職した人に支給される手当ってことで、
「失業保険がもらえるから、早く就職しちゃうと損しちゃうよね」
をなくそうという国の施策です。(早く就職してねってことです)
とはいえ、早く就職すれば、なんでもかんでも、再就職手当を支給できるわけではありません。
再就職手当の支給を受けるには、次の8つの要件を、すべて満たす必要があります。
- ハローワークで手続きを行い、待機期間(7日間)後の就職であること
- 失業保険の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上であること
- 離職前の事業所(会社等)に再び就職したものでないこと
- 給付制限(2ヶ月または3ヶ月)がある場合、待期期間(7日間)後の最初の1か月間については、ハローワークまたは職業紹介事業者等の紹介で就職したものであること
- 1年を超えて勤務することが確実であると認められること
- 雇用保険の被保険者要件を満たす条件での雇用であること
- 過去3年以内の就職について、再就職手当又は常用就職支度手当の支給を受けていないこと
- 受給資格決定(求職申し込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
ただし、「こんなの満たせるわけないよ~」というような、ハードルの高い要件はありません。
雇用保険の被保険者であれば、結構な確率で支給が受けられると思いますので、安心してください。
もちろん、8つの条件を満たせば、
- パートやアルバイトで勤務していた人
- パートやアルバイトで就職した人
でも再就職手当をもらうことができます。
【詳細記事】
再就職手当の「8つの支給要件」については、こちらの記事で詳しく説明しています。
パート・アルバイト・契約社員・派遣社員で働くときは、「雇用期間」と「雇用保険への加入有無」に注意する
パートやアルバイトなどの非正規で働くときに、気をつけないといけない再就職手当の要件は、次の2つです。
- 1年を超えて勤務することが確実であると認められること
- 雇用保険の被保険者要件を満たす条件での雇用であること
1年を超えて勤務することが確実であると認められること
再就職手当は、早期に安定した職業に就いた人に支給される手当です。
そのため、新しい就職先で1年以上働くことが要件(前提)となっています。
正社員などで就職し、「雇用期間の定めなし」という雇用条件なら全く問題はありません。
ただ、パートやアルバイト、契約社員などの場合は、契約期間が1年未満のことがあるかと思いますので注意が必要です。
就職時には、しっかりと雇用条件を確認してください。
なお、雇用契約が1年未満であっても契約が更新されることが確実であれば、再就職手当の支給が受けられます。
確認方法は、再就職手当をもらうときに提出する「再就職手当支給申請書」の「17.雇用期間」の欄です。
この項目は、就職先の事業主に書いてもらうところです。
「1年を超えて雇用する見込み」が「有」になっているかで判断されます。
【再就職手当支給申請書】
雇用保険の被保険者要件を満たす条件での雇用であること
雇用保険の加入要件(条件)とは、次のいずれも満たすことです。
- 31日以上の雇用見込みがあること
- 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上であること
また、「31日以上の雇用見込み」とは、次のいずれかに該当する場合をいいます。
- 期間の定めがなく雇用される場合
- 雇用期間が31日以上である場合
- 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
- 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合
⇒当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であっても、その後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。
事業主は、労働者を一人でも雇っていれば、雇用保険の加入手続が必要となります。
ただ、雇用保険の加入要件(条件)を満たしているのに、雇用保険に加入させてくれないという事業所があるもの事実です。(違法ですが・・・)
なので、パートやアルバイトなどの非正規での就職の際は、雇用保険への加入ができるかどうかの確認を徹底することをオススメします。
支給金額は、自己都合退職で、最大「約65万円」
再就職手当の支給額は、次の計算にて決定されます。
再就職手当の支給額 =
基本手当日額 × 所定給付日数の支給残日数 × 支給率(60% or 70%)
基本手当日額の計算方法
失業保険(基本手当)が受給できる1日あたりの金額のことを「基本手当日額」といいます。
基本手当日額は、「賃金日額」の45~80%の範囲で設定されます。
こんな感じです。
出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります(令和6年8月1日から)」
たとえば、
- 離職時の年齢 30~34歳
- 賃金日額 10,000円
という条件で、基本手当日額を算出してみると、
0.8×10,000-0.3((10,000-5,200円)÷7,590)×10,000=6,102円
となり、基本手当日額は、6,102円となります。
また、再就職手当における「基本手当日額」には上限があり、次のようになっています。
【令和6年8月1日現在の上限額】
- 離職時の年齢が60歳未満の場合 6,395円
- 離職時の年齢が60歳以上65歳未満の場合 5,170円
所定給付日数の支給残日数の算出方法
所定給付日数とは、基本手当(失業保険)をもらえる最大日数のことです。
所定給付日数は、
- 離職時の年齢
- 雇用保険加入期間(被保険者期間)
- 退職理由
の3つの条件により決定されます。
一覧表にすると、こんな感じです。
【自己都合による退職(一身上の都合など)】
雇用保険の被保険者であった期間 | |||||
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
全年齢 | - | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
【会社都合等による退職(倒産、解雇等など)】
雇用保険の被保険者であった期間 | |||||
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
29歳以下 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30~34歳 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35~44歳 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
45~59歳 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60~64歳 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
再就職手当を計算するときの「所定給付日数の支給残日数」とは、所定給付日数のうち、基本手当(失業保険)をもらっていない日数のことです。
なので、所定給付日数「90日」の人が「30日間」の基本手当(失業保険)をもらっている場合は、残りの「60日」が「所定給付日数の支給残日数」ということになります。
支給率(60% or 70%)
支給率は、早く再就職したほうが給付率が高く、
- 所定給付日数の3分の1以上を残して就職した場合は、支給率「60%」
- 所定給付日数の3分の2以上を残して就職した場合は、支給率「70%」
となります。
わかりやすく一覧にすると、こんな感じです。
出典:ハローワーク「雇用保険の失業等給付受給資格者のしおり」
再就職手当の試算
次の条件で、「再就職手当」がどのくらいになるか計算してみます。
【試算の条件】
- 離職時の年齢:30~34歳
- 離職前6ヶ月間の月額平均給与:300,000円
- 雇用保険加入期間:5年以上10年未満
- 退職理由:自己都合退職
- 支給残日数:90日(給付制限中に就職)
【試算結果】
- 基本手当日額:6,102円
- 所定給付日数の支給残日数:90日
- 支給率:70%
- 再就職手当の支給額:384,426円
この条件の場合、再就職したときに、384,426円が給付されます。
再就職手当の金額【令和6年8月1日以降】
再就職手当の計算は面倒なので、支給額がパッとわかるように
- 再就職手当の1日あたり支給額早見表
- 再就職手当(失業給付)支給額早見表
を載せておきます。
ぜひ、あなたがいくらもらえるのか、チェックしてみてください。
再就職手当の1日あたり支給額早見表
「離職前6ヶ月間の月額平均給与」とあなたの「所定給付日数の支給残日数」が交わるところが「再就職手当の1日あたり支給額」です。
⇒再就職手当の1日あたり支給額早見表20240801 ※クリック
再就職手当(失業給付)支給額早見表
「離職前6ヶ月間の月額平均給与」と、あなたの「所定給付日数」が交わるところが「再就職手当支給合計額(満額)」です。
⇒再就職手当(失業給付)支給額早見表20240801 ※クリック
【関連記事】
「所定給付日数は、どうやって決まるの?」という人は、こちらの記事をご覧ください。
手続きは、まず、ハローワークに離職票等を持っていき、求職申込みを行うこと
再就職手当を受給するためには、次の書類を持ってハローワークに行き、手続きをします。
【必要書類】
- 離職票-1
⇒氏名や口座番号などを記入 - 離職票-2
- マイナンバーカード(マイナンバーカードを持ってない場合は、次の①②が必要です)
①個人番号確認書類(いずれか1種類)
⇒通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)
②身元確認書類(いずれか1種類)
⇒運転免許証、運転経歴証明書、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など - 本人の印鑑(認印で可)
⇒スタンプ印は不可 - 写真2枚(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)
- 本人名義の預金通帳
- 船員であった方は船員保険失業保険証および船員手帳
あとは、ハローワークの職員さんが案内してくれるので安心です。
なので、まずは、ハローワークに行って、求職の申込みを行いましょう。
ちなみに、「1.離職票-1」と「2.離職票-2」については、退職した会社から届くのに、通常2週間程度かかっちゃいます。
ただし、離職票の代わりに「退職したことがわかる書類(退職証明書など)」を持っていけば、「1.離職票-1」と「2.離職票-2」は、後日提出でOKです。
そうすれば、退職日の翌日からハローワークで手続きができます。
【詳細記事】
離職票が届く前に行う手続き(求職申込み)については、こちらの記事で詳しくまとめています。
⇒離職票が届く前に手続き可能!失業保険を早くもらう方法【ハローワーク確認】
再就職手当は、ハローワークの紹介じゃなくていい(人材紹介サービスの利用でOK)
「再就職手当って、ハローワークからの紹介じゃないと支給されないんでしょ?」
と聞かれることがあるんですが、ぜんぜん、そんなことありません。
なので、無料で利用できる民間の人材紹介サービス(リクルートエージェントなど)で転職した場合でも受給できます。
根拠としては、再就職手当の8つの要件の1つ、
「給付制限がある場合、待期期間(7日間)後の最初の1か月間については、ハローワークまたは職業紹介事業者等の紹介で就職したものであること」
のとおりです。
はっきりと、「ハローワークまたは、職業紹介事業者等の紹介で就職」と書いてありますよね。
そういう意味では、「ハローワークの紹介っていい求人ないんだよね~」という人でも、再就職手当をもらわないのはもったいないと思います。
ちなみに、「再就職手当」が支給される人材紹介サービス会社は、いくつかの基準がありますので、利用される際は事前確認を徹底してください。
【関連記事】
こちらの記事で、再就職手当が支給される人材紹介サービスを紹介しています。(ハローワークに確認済み)
求人サイトの利用でも再就職手当は支給される(一部要件あり)
再就職手当は、
- インターネットの求人サイト(リクナビNEXT など)の利用
- 新聞折込などの求人広告への自己応募
でも支給されます。
ただし、繰り返しにはなりますが、給付制限のある人の場合は、待期期間(7日間)後の最初の1か月間の就職については、「ハローワークまたは、職業紹介事業者等の紹介で就職」という制約があります。
なので、早期の就職を考えているなら、人材紹介サービスの利用がオススメです。
まぁ、制約があるのは給付制限期間の最初の1か月間だけなので、求人サイトと人材紹介サービスを併用しておくのが一番ですけどね。
受給資格決定(ハローワークへ求職申し込み)前に、就職の内定をもらわないこと
最後は、再就職手当をもらうために、特に、注意してほしいところです。
それは、再就職手当の8つの要件の1つである、
「ハローワークへ求職申込みする前に、採用内定をもらわないこと」
です。
僕らのあたりまえの心理として、「次の職場を決めてから退職する」というのがありますが、ハローワークへ求職申込みする前に内定をもらってしまうと、再就職手当の受給ができなくなってしまいます。
ただ、転職活動として、
- 人材紹介サービスへの登録、利用
- 事業所(次の職場)の情報収集
- 事業所(次の職場)の見学、面接
は、まったく問題ありませんので、安心してください。(内定さえもらわなければOK)
まとめ
ここで、再就職手当について、おさらいです。
- 再就職手当の要件は、そんなに厳しくない
- パート、アルバイトでも再就職手当はもらえる
- 支給金額は、自己都合退職で、最大「約65万円」と強烈な金額に
- ハローワークへの「求職申込み」を、必ず行うこと
- 民間の人材紹介サービス(リクルートエージェントなど)の利用でOK
- インターネット求人サイト(リクナビNEXT など)の利用もOK
- ハローワークへ求職申込みする前に、採用内定をもらわないこと
- 内定さえもらわなければ、転職活動は自由に行える
再就職手当は、ここの数年間で、支給率が大幅に上がっています。(支給率30% ⇒ 最大70%へ)
なので、雇用保険料を払っているなら、利用しないのはもったいないです。
雇用保険は、利用しないと、保険料を払い続けるだけなので。
ぜひ、転職の際は、「就職お祝金」として再就職手当をもらってください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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