この記事では、傷病手当金の
- 支給条件
- 計算方法
- 支給額(早見表)
- 支給期間
- 休業中の社会保険料等の取扱い
- 申請手続き
- 支給されるまでの期間
について紹介しています。
会社員などの社会保険に加入してる人は、病気やケガで仕事を休み給与がもらえないとき、生活保障として健康保険から「傷病手当金」が支給されます。
ただ、「傷病手当金」をもらうには、いくつかの条件を満たす必要がありますので、もしものときのためにも、ぜひ、チェックしてみてください。
傷病手当金は、5つの支給条件をすべて満たした場合に支給される
傷病手当金の支給条件は次の5つです。
- 社会保険の加入者(被保険者)であること
- 業務外での病気やケガのため休んでいること
- 仕事に就くことができないこと(働くことができないこと)
- 連続して3日間以上働くことができなかったこと
- 休んでいる期間について給料をもらっていないこと
それでは、1つずつみていきます。
社会保険の加入者(被保険者)であること
傷病手当金は、社会保険(健康保険)の制度であるため、社会保険に加入していない人は支給の対象となりません。
なので、支給対象となるのは、次のような人です。
- 会社員(正社員)
- パート、アルバイト(社会保険に加入している場合)
逆に「対象にならない人」は、
- 国民健康保険の加入者(自営業の人など)
- 家族等の扶養に入っている人
となります。
会社員などの社会保険加入者は、社会保険料が折半になる上、傷病手当金等の制度もあるため、自営業の方に比べ、保障が手厚くなっています。(国民健康保険に、傷病手当金という制度はありませんので)
業務外での病気やケガで、仕事を休んでいること
仕事中の事故や仕事が原因の病気で、仕事を休んでいる場合は、傷病手当金の支給対象となりません。
ただ、その代わりに、傷病手当金よりも給付額の多い「労災保険による休業補償」があります。
【関連記事】
仕事に就くことができないこと(働くことができないこと)
「働くことができない」かどうかの判断は、医師が行います。
なので、「あー、これは働けないな~」という自己判断で仕事を休んだ場合は、傷病手当金は支給されません。
ですので、病院などを受診し、
「その病気やケガが原因で働くことができない(労務不能)という診断」
を医師にしてもらう必要があります。
連続して3日間以上働くことができなかったこと
傷病手当金は、休み始めてから「4日目以降」について支給されます。
最初の3日間(連続であること)は、待期期間と呼ばれ、傷病手当金の支給はありません。
たとえば、あなたが金曜日にケガをした場合、
- 医師が、ケガをした金曜日から労務不能と診断
- 「金・土・日曜日」の3日間が待期期間
- 月曜日(4日目)から傷病手当金が支給
ってことになります。
休んでいる期間について給料をもらっていないこと
傷病手当金が支給される4日目以降について、給与の支払いがある場合は、傷病手当金は支給されません。(支給額によっては、減額調整となります)
ですので、
「有給休暇を取得した日は、会社から給与が支払われるため、その日については傷病手当金は支給されない」
ってことになります。
なお、社会保険の被保険者期間は支給条件に入っていないため、入職してすぐに病気やケガで働けなくなった場合でも「傷病手当金」は支給されます。
つまり、
「入職日の朝に自宅で転倒して労務不能となった場合は、傷病手当金が支給される」
ってことです。(事業主と相談が必要そうですが・・・)
傷病手当金の支給額(傷病手当金支給日額早見表)
傷病手当金の1日あたりの支給額 =
支給開始前(12ヶ月)の平均標準報酬月額 ÷ 30日 × 2/3
これだと、「パッ」と計算できないので、早見表(概算)にしておきます。
使い方は、次のとおりです。
- あなたがもらっている月額給与にて「傷病手当金支給日額」をチェック
⇒これが「傷病手当金の1日あたりの支給額」です。 - 仕事を休んだ日数から3日を引く
⇒これが「傷病手当金の支給日数」です。 - 「傷病手当金支給日額」と「傷病手当金の支給日数」を掛ける
- 計算結果が、「傷病手当金の支給合計額」となります。
月額給与「0円以上~370,000円未満」
月額給与「370,000円以上」
たとえば、月額給与40万円の人が、30日間仕事を休んだ場合、
9,113円 × 27日 = 246,051円(傷病手当金の支給合計額)
となります。
傷病手当金を自動計算する「エクセルファイル(無料)」
「もっと、詳細に傷病手当金の支給額を計算したい!」
という人は、こちらのエクセルファイルを使ってみてください。
「傷病手当金支給額算出表」ダウンロード
⇒syoubyouteatekinkeisan20190401
使い方は、すっごく簡単で「黄色のセル」に
- 仕事を休んだ日数
- 月額給与(交通費を含む総支給額)
を入力するだけです。
あとは、自動で「傷病手当金」の
- 標準報酬月額
- 標準報酬日額
- 支給日額(1日あたりの金額)
- 支給日数
- 支給合計額
が計算されます。
なお、動作確認を徹底したつもりですが、利用については各自の責任でお願いします。
傷病手当金の支給期間
同一の病気やケガで支給される期間は、支給開始から最大で1年6ヶ月です。
注意する点としては、
「1年6ヶ月分の傷病手当金が支給されるということではない」
というところです。
こんな感じに。
あくまで、「支給開始から1年6ヶ月間の期間」ということで、「何ヶ月間分の傷病手当金の支給を受けたか」は関係ありません。
【関連記事】
傷病手当金の支給期間の考え方は、令和4年1月1日より変更となります。
詳しくは、こちらの記事でまとめています。
ちなみに、次の条件をいずれも満たすことで、会社などを退職した後も「傷病手当金」の給付を継続できます。
つまり、仕事を辞めた後も給付されるってことです。
(資格喪失後の継続給付)
- 被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間(健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。
- 資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。(なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金はお支払いできません。)
【関連記事】
「退職後の傷病手当金のもらいかた」については、こちらの記事で詳しく説明しています。
⇒退職後に傷病手当金はもらえる?【回答:3つの条件を満たせばもらえる】
病気やケガで仕事を休んでいる期間も、社会保険料等は徴収される
一般的に、社会保険に加入している人の場合、
- 健康保険料
- 介護保険料(40歳以上で徴収)
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 所得税
- 住民税
が毎月の給与から引かれています。
これらの社会保険料等は、傷病手当金の支給を受ける期間(病気やケガで仕事を休んでいる期間)においても、給与から天引きされます。
金額(社会保険料等の額)については、
- 仕事を休む前と同じ金額
- 給与支給額に比例して変動
の2つに分けられ、次のようになります。
【仕事を休む前と同じ金額】
- 健康保険料
- 介護保険料(40歳以上で徴収)
- 厚生年金保険料
- 住民税
【給与支給額に比例して変動】
- 雇用保険料
- 所得税
なので、場合によっては、給与が「マイナス」ってこともありえます。
もしものことを考え、支払方法については、職場の担当者に確認しておきましょう。
【関連記事】
傷病手当金の申請手続き
傷病手当金の申請書類
傷病手当金の申請手続きは、
「健康保険傷病手当金支給申請書」
にて行います。
こんな様式です。(令和5年1月の新様式です)
傷病手当金の申請手続きは、事業主を通じて行う
傷病手当金支給申請書には「事業主が証明するところ」があるため、申請手続きは事業主を通じて行われることがほとんどです。
ですので、職場の担当者に相談すれば、
- 提出書類(添付書類)
- 申請書の書き方
- 事業主の証明
など、すべて案内してくれるはずです。
「労務不能」の診断には、お金がかかる(300円程度)
「健康保険傷病手当金支給申請書」の4枚目に、医師に記載してもらう項目があります。
こんな感じです。
この書類の記載は、保険適用となっているため、3割負担で「約300円」のお金がかかることになります。(自費の診断書と違い、安く済みます)
どんな病気(ケガ)が対象になるのか
傷病手当金の支給条件を満たせば、原則、すべての病気(ケガ)が対象となります。
記憶の範囲ですが、僕が手続きさせてもらった「傷病名」をいくつか紹介します。
- うつ病
- 自律神経障害
- 適応障害
- がん
- 関節の炎症(膝や手首)
- 半月板損傷
- 流行性結膜炎
- 腱鞘炎
- 骨折
- 脊髄損傷
- つわり
- 妊娠悪阻
- 切迫流産
- 切迫早産
- 痛風
- 腰椎椎間板ヘルニア
きりがないんで、このへんで・・・
【関連記事】
傷病手当金は、事業主へ申請書を提出してから「1~2か月」で支給される
全国健康保険協会の資料では、傷病手当金が支払われるまでの期間について、次のように案内しています。
よくあるご質問
Q:支払いまで何日かかりますか?
A:協会けんぽでは、給付金のお支払いまでの所要期間を受付から10営業日と定め、迅速なお支払いに努めています。(高額療養費および療養費は除きます)
記入漏れや口座の記入誤り等の不備があると、お支払いまでお時間を要しますので、申請書ご提出の際は、記入漏れ等がないかご確認の上、ご提出いただきますようお願いします。
出典:全国健康保険協会愛知支部「協会けんぽまるわかりガイド」
「受付から10営業日」ということなので、約2週間で入金されることになります。
ただ、先ほど説明したとおり、傷病手当金の申請は、一般的に事業主を通じて行われますので、
- 事業主による書類(申請書)の作成
- 健康保険協会への申請書の提出
などの期間を考慮して、「支給まで、早くても1ヶ月」と考えておいた方がいいと思います。
ちなみに、うちの場合は、次のような流れで「傷病手当金の支給申請」を行うため、
「申請書をいただいてから、1~2か月で支給されます」
と職員さんに案内しています。
【傷病手当金支給申請の流れ】
- 傷病手当金を申請する職員が、申請書を作成し、事業所の担当者へ提出
- 事業所の担当者が申請書の作成・確認をして、社会保険労務士へ送付
- 社会保険労務士から健康保険協会へ申請書を提出
まとめ
ここで、「傷病手当金の支給申請をするときのポイント」についてまとめておきます。
- 仕事を休んだ理由が、業務外での病気やケガであること
- 医師から「労務不能」という診断を受けること
- 待期(連続する3日間)が完成しないと、傷病手当金は支給されない
- 有給休暇を使った日は、傷病手当金は支給されない
- 傷病手当金は、「月額給与」と「仕事を休んだ日数」から計算される
- 傷病手当金の支給期間は、支給開始から最大で1年6ヶ月
- 病気やケガで仕事を休んでいる期間も、社会保険料等は徴収される
- 傷病手当金の申請手続きは、まず、職場の担当者に相談すること
- 「労務不能」の診断料は、保険適用で安い
- 傷病手当金は、すべての病気(ケガ)が対象
- 傷病手当金は、申請から「1~2か月」で支給される
傷病手当金を含め、社会保険加入者って保障が手厚くなっています。
ただ、知らないと使えない制度も多いので、
「こんな制度あったよな~」
ぐらいには、理解しておくことをオススメします。
せっかく社会保険料を払っているのに、制度を利用しないのはもったいないので。
ちなみに、国民健康保険加入者になく、社会保険加入者が使える主な制度は次のとおりです。
- 傷病手当金
- 出産手当金
- 育児休業給付
- 介護休業給付
- 失業保険(基本手当・再就職手当)
- 高年齢雇用継続給付
【関連記事】
また、「傷病手当金」の支給額がある程度わかっていると、必要以上の生命保険等(生活保障)に加入することもなくなります。
生命保険等の加入を検討するときは、事前に、傷病手当金の支給額を試算しておきましょう。
【関連記事】
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【あわせて読みたい】
コメント